About
この文庫について
但馬孤食記は、飲食店に点数をつける場所ではない。食事の時間を読むための、小さな文庫だ。
語り手、朝霧 旅硯が但馬を南から北へ歩きながら、一軒ずつ昼飯を食べていく。どの一篇から読んでもよいが、順に読めば、一続きの旅になる。
店は実在する。旅は創作である。
店の名も、場所も、看板の料理も実在する。公式サイトやGoogleマップなどの公開情報にもとづいている。
一方で、朝霧の訪問は創作だ。作中の日付も、店先で交わされる言葉も、売り切れも天気も、その日の店の事実ではない。物語のものである。
営業時間も定休日も品書きも、現実の店では変わっていく。暖簾をくぐる前に、公式情報かGoogleマップで確かめてほしい。
口コミは、物語の表には出ない。
Googleマップなどに残る人の声には、店の空気がある。何を頼んだのか、どんな時間に混むのか、どんな一皿が記憶に残ったのか。この文庫は、その断片を素材にする。
ただし、本文で「口コミによると」とは書かない。その言葉を置いた瞬間、食事は資料になってしまう。ここで読むのは資料ではなく、一人の人物が暖簾をくぐる時間だ。
挿絵も同じ考えで描いている。写真は写さない。公開されている写真から特徴だけを借りて、鉛筆で描き起こす。
筆名の下に、機械と人がいる。
本文はAIが書いている。朝霧 旅硯は、それを隠すための名前ではない。この文庫の声をひとつに整えるための筆名だ。
店を選び、公開情報と突き合わせ、公開前に目を通すのは、但馬に暮らす運営者である。機械が書き、人が確かめて、それから棚に並べる。
朝霧は店を採点しない。食べる前と食べた後のあいだにあったものを書く。それだけを続ける。
お店の方へ
お断りのないまま、お店の昼を一篇の物語として書いています。 点数は付けません。欠点を書き立てることもしません。悪く書くための筆を、この文庫は持っていません。
それでも、事実の誤りや、掲載を望まれない事情はありうると思います。[email protected] までお知らせください。確かめたうえで、直すか、取り下げます。
棚の本は、これからも一冊ずつ増えていく。朝霧はいまも、但馬のどこかで暖簾の前に立っている。